天使のささやかな贈り物



*ルミさんのキリ番リクエストの 『波音に誘われて』『波の気持ち』
続編です。(^^)


俺はミックエンジェル。敏腕新聞記者だ。
今、俺はある小説家から仕事を請け負っている。
依頼内容は、『シティーハンター二人の甘いエピソードをゲットせよ』。
しかし、ここ数カ月あの手この手を尽くしたがことごとくリョウに阻止され、
依頼人好みのレポートを提出できず、10歳以上年齢の離れている依頼人に
『使えない』と言われ続けては肩身のせまいこと極まりない。
いいかげん面目躍如しないと、契約自体危ない。

せっかくの趣味と実益を兼ねた仕事をみすみす手放すなんて
もったいなさすぎる。
そこで、ここ数日他の仕事を放り投げ、
張り付きで二人の監視を続けていたのだった。

そして、珍しく依頼続きだった二人は何故か依頼人を送った後に
そのまま海へ。
リョウに気付かれない程度に距離を保ち、尾行。
そして、松林で眠りこけるリョウと浜辺で貝と戯れる
チャーミングなカオリを双眼鏡にて監視を続ける事に成功していた。
しかし、なぜそういった流れになったかはクーパーへの盗聴機の
取り付けに失敗していた為、伺い知る事はできなかった。

それにしても、海でのカオリはまたいつもと違って見えて
なかなかのお宝映像だ。
これは別途プライベート用に確保、だな。
一瞬車を降りた際にリョウの口元が緩んだのは、
依頼人へのレポートの特筆事項だ。
できる事ならカオリだけを満喫したいが、仕事だから仕方ない。

夕方になり、海を後にした二人は、帰路へ。
しかし混雑に巻き込まれ、車は一向に進まなくなった。
この分だと新宿に着くのは午前様になりそうだ。
まぁあの二人の事だ、このままどこかへ宿泊するような事は
ないだろうと高を括っていた。

・・・が、どうした事だろう!
数台先を進むクーパーは左折ウィンカーをだし、
ゆっくりとその横顔を見せて曲がっていった。

慌てて曲がった先を確認すると、『旅館』の文字。
Oh My God!!
とうとうあの麗しのカオリが、リョウの毒牙にかかる時がきたのか。
一体あの天の邪鬼はどんな顔して、カオリをたぶらかしたのか・・・
複雑な気持ちだ。

しかし、これは仕事。
しかも依頼人の求めているレポート内容は『シティーハンター二人の
甘いエピソードをゲットせよ』だ。
これは願ってもないチャンス。
非情に、無感動になれと仕事モードの心の内の俺は
叱咤激励している。

旅館内を伺うと、何やら一部屋しかない事で揉めている。
これはもう一押しが必要と判断した俺は、
非情な心でクーパーのネジを一本抜いた。
これで、シュチュエーションは揃った。
案の定一旦帰ろうとした二人の足留めに成功。

さて、そして俺はいつものように自分の魅力を
十分に利用して泊まる場所を親切な仲居さんに確保していただき、
(部屋はもちろん空いていないから"布団部屋"と言われる場所だが、
ただ寝るだけなら十分だ)足音を忍ばして二人の部屋へと向かった。

薄い襖の向こうから聞こえるぼそぼそとした声に、耳をそばだてる。


「それとも・・・こっちほうがお好み、か?」
リョウの声がしたかと思うと、カオリの驚いた声と、ドサッと何かが倒れる音。


こ、これは!!
決定的チャンスだと俺の記者魂が告げていた。
急いで襖を薄く開け、様子を伺う。

すると、目に飛び込んできたのは
普段からは想像もできない甘い雰囲気の二人。
畳の上でリョウに組み敷かれたカオリの姿だった。


一瞬、思考が止まった。
そして仕事だという事を忘れ、俺は襖と共に倒れこんだ。


「・・・なんで、お前がいんだ・・・?」
「ハ、ハハハ。ハロー、二人共」


不覚だった。そんな二人の姿が、それ程自分を動揺させるとは
自分自身も思っていなかった。
カオリへの気持ちが、まだこんなにも浄化されていないのを
突きつけられた感じがした。

そして、瞬時に冷めちまったリョウに連れ出され、
片田舎のパブのカウンターにてリョウと二人肩を並べて酒を飲むに至る。

場所は違えど日常と変わらないシチュエーション。
リョウがいつにも増して口数が少ない事を除いては。

「・・・んで、なんでお前はここにいるんだ?」
二人とも無言である程度アルコールを体内に取り込み、
やっと口を開いたかと思うとやはり予想通りの問い。

「だからぁ〜さっきも言ったけど、たまたま
こっちのほうで取材があって、お前達のクーパー
見つけたから追っかけてきたんだよ。ほんと奇遇だよなぁ」
「ほぉ〜たまたまねぇ・・・」
「そうそう♪」

少々苦しい言い訳だが、押し切るしかない。
冷や汗が背中をつたうのを感じながら、空笑いする。
依頼の保守義務の為、ここはかわすしかない。

お互いの視線の先で、火花が散るような攻防が続く。

「・・・ま、そういうことにしといてやるよ、今回だけはな」
攻防の末、リョウの視線が先に逸らされた。
『だけ』という言葉に、少々トゲを感じる。
リョウの事だ、多分俺が某小説家より依頼受けているのは
バレていると思ったほうがいい。

「それにしても、さっきは悪いタイミングで出ていっちまって
悪かったなぁ〜」
わざわざ藪を棒でかき回す事は無いと判断し、話を逸らす。
それに、こっちの藪は突付きがいがある。
リョウの動揺も誘えてうやむやにしやすくなるしな。

「・・・わざと出てきたクセに何言ってんだが」
あさっての方向を見ながらぼそっと呟いた言葉、
しっかり聞こえてるぞリョウ。
随分とポーカーフェイスの下手になった元パートナーに、
微笑ましくなる。

「ほほぉ〜、よっぽど惜しい事をしたと思ってるみたいなぁ♪」
「ば、ばか言ってんじゃねぇ!誰がっ!?あ、あれはだなぁ〜、
たまたま香のヤツが転びやがってそれであんな状態になったんだ!
そう、そうなんだよっ!だれがあんな男女とで惜しいなんて思うかよ!」

最後にそんな捻くれた発言を付け加える所が、リョウらしいというか
なんというか・・・
あの瞬間、ジェラシーに駆られて衝動的に
せっかくのタイミングを潰してしまった俺自身が
同情するのもおかしな話だが、心底カオリに同情した。

こんな素直じゃない男に惚れて君も大変だね、カオリ。

そして愛しい初恋の君の為に、一肌脱ぐ事を決意した。
依頼人にも、オフレコ時間だ。

「・・・あれは事故だったんだって言い張るんだな?」
「ああ!もちろんだ」
「そうか、そうか。じゃあお前はカオリにはそういった感情は無いと・・・?」
「何度言わせるんだっ。ないったらない!」

「んじゃあ、今お風呂で汗を流して色っぽい浴衣に着替えてるかもしれない
カオリに、俺が会いに行っても全然かまわないと?」
「なぁ〜にが色っぽいだ。浴衣がかわいそうってもんだ」

リョウ、浴衣って言った瞬間お前の顔が少々崩れかけたのを
俺は見たぞ。
もう一押しだな。

「じゃあ、そんな素敵な浴衣姿のカオリに俺がくらくらして
さっきのお前みたいにまかり間違って押し倒してしまっても、文句はないと?」
「んな?!何言ってんだ?!お前にはかずえちゃんというものがあるじゃないか!」

「カズエはカズエで大事だが、カオリはカオリで特別な存在なのだ♪」
「ほ、ほぉ〜まったくお前って奇特なヤツだよなぁ」
リョウ、グラスを持つ手が震えてるぞ。
しかも、こめかみがピクピクといっている。

「またまたぁ、やせ我慢しちゃってぇ」
「うるせぇ!うるせぇ!我慢なんかしてねぇ!!」

相変わらず強情だねぇ。その表情のクセして。
心の中で溜息をつきながら、表面上はリョウを挑発する表情を崩さない。

「じゃあ、俺が今からカオリに夜這いしてもいいよなぁ〜?」
「・・・」
「あれ?リョウなんか今押し黙ったかぁ〜?」
「んな訳ねぇだろ!勝手にすればぁ〜?」
「それじゃ、俺はカオリの浴衣姿拝んでくるねぇ。
ついでに、その素敵な中身も〜ぐふふ。じゃーなぁリョウ♪」
「お、おい!??ミック!?」

俺はリョウを煽るだけ煽って、パブをひらひら手を振りながら出た。
向かった先は・・・もちろんカオリの所ではない。
カオリの所に向かった振りをして、寝床として確保した布団部屋へと
向かった。

これで、リョウはカオリの元へ向かっただろう。
血相変えてな(笑)
悲しいかな、カオリが側にいて欲しいと願っているのが
リョウであるのは明白だ。


失恋天使からのプレゼント、しっかり受け取ってくれよお二人さん。



fin

初めてWeb拍手のお礼ではなく、ミックレポート書いてみました。
って、すでにレポートでなくなってますが(^^;)
原作のミックが香に昼間に夜這い(これでいいのかな?)しようとした時と、
W夜這いの時のリョウの手の震えとか表情で表現されてる
ヤキモキ具合が、すっごく好きなのでやってみたくて
こんな感じになりました(*^^*)


Back