<後日談 〜CAT'S EYEにて〜>




「りょお〜あんたってやつは性懲りもなく〜〜!!」


「けっ誰が男の依頼なんて受けるかっ!!ちょっとはましな依頼
とってこい!!」


「もっこり美女の依頼のどこがましなんじゃっ天誅っっ」


どごーーん


「ぐへっ・・・」


「良い?!この依頼受けますからね!」


「ぶぅーー」


「ふて腐れるんじゃないっ」







・・・ふぅ。ほんと、どうしてこの二人はいつもいつもウチで
喧嘩するのかしら。


「まぁまぁ二人とも。コーヒーでいい?」


「あっ、ごめんなさい美樹さん。お願いするわ」


漸くいつものカウンター席に腰掛ける二人。
どんなに喧嘩していても毎度隣同士の席に座る二人が
なんだか可笑しい。


「あんたも少しは自粛って言葉をわきまえてほしいわよ。
海坊主さんをちょっとは見習いなさい」


「あら、香さん。ファルコンは自粛も何もそんなこと
考えもしないわ。冴羽さんと一緒にしないで」


「けっ男なんてみんな同じさ。もっこりで生きてんの〜」


「世の中あんたみたいなのばっかになっちゃったら、秩序と道徳が
崩壊するわよ」


「ふ〜ん。オトコオンナな香くんはその立派な秩序とやらを持つ
世の男の代弁者ってわけか〜」


「なんだと?!」


「ああ〜なんでボキの周りには香みたいのしかいないんだろうなぁ」


「りょうっ!!」


「だからこそ!!おれは新たな出会いを求め日々もっこりちゃんの
ナンパにいそしむのだ!!」


すこーーん


「はぁ。呆れてものも言えないわ」


「でもハンマーは出せるのね・・・香ちゃん・・」





冴羽さんも素直じゃなわね、ほんっっっとに。

美樹はあらためてつくづく思う。

この前の飲み会で現在の二人の関係を知ったことを、美樹は
香と僚に言うタイミングを失ってしまっていた。

尚も自分の目の前で小競り合いを続ける二人に、この間垣間見た
雰囲気は微塵も感じない。
まるであのとき見た二人のやりとりや光景が夢だったかのようだ。



しかし、最近めっきり綺麗さに色気も帯びるようになった香に、
美樹は薄々気付いてはいたものの、あらためて認識させられた
事実に、驚きと同時に嬉しさがこみあげてくる。
同じ裏の世界の男を愛した者同士。香には絶対に幸せになって
ほしかったから。




「・・・さん、美樹さん?」


物思いにふけっていた美樹の顔を香が不思議そうに覗き込む。


「・・え?ああ、何?」


「美樹さんも何か言ってやってよ、コイツに!!」


「そうねぇ・・・」



香がじろりと僚の横顔をにらみこむ。
そんな香の視線を気にすることなく僚は平然とコーヒーを啜っている。
そんな相変わらずな男に美樹は呆れつつも、少し考えた後
意味ありげに微笑みかけ声をかける。





「ほどほどにね、冴羽さん?」





そんなどこか含みのある美樹の台詞に、僚はチラリと美樹に視線を
向け、これまたニヤリと意味ありげに口元を歪めた。






「そりゃあ、無理な相談だな」








「は?!無理ってどういうことよ!ちょっとはそのナンパ癖
治す努力をしなさいっ!!」


「ふ〜んだ。なんでおれがそんな努力しなきゃならないんだ。
嫌だったらおまぁが止める努力すれば〜」


「このぉ〜・・・りょお〜・・・・!!」





・・・・・・・・・・。



“無理な相談”―。それはきっと香がとった意味ではなく、美樹が
いわんとしていたことに対しての答えだろう。

もしやこの前の出来事は男の確信犯だったのか何なのか。
聞いたところではぐらかされるのがオチね。

何度も言うけど、ほんっと素直じゃないのね。この男の愛情表現は。
そして香さんもつくづく鈍感だし。まいったわ、本当。



ま、勝手にラブラブでもいちゃいちゃでもしてて欲しいわね。
今までの我慢してきた想いの道のりが長く果てしなかった分、
思う存分冴羽さんには甘えさせてあげなきゃね、香さんも。
一度箍が外れたあの男は、大変よ、きっと。





さて。今度、どうやってからかってやろうかしら。


第二回飲み会とともに美樹はそんな楽しい計画を考えていた。




あくまで、二人の幸せを祈りながら・・・?



◎FIN◎


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