ドッペルゲンガー・パニック2




「・・・で、断りきれずにここに来たわけね」
「そう」

結局、柘植君に押し切られて一緒にお茶することになった
あたしは、キャッツへと向かった。

彼がちょっと席を立った時、お店に入ってきた時から
ビックリした表情をこちらに向けていた美樹さんに、
今までの経緯を話す。
誰かに、自分が受けた衝撃を共有して欲しかった。

「それにしても、本当に似てるわね。冴羽さんに。まさか、
冴羽さんの息子って事ないのよね?」
「たぶん、そうじゃないと、思う・・・」
断言できないところが、なさけない。

「まぁ、世の中にはそっくりな人間が3人いるらしいから、
そのうちの一人なのかもしれないわね」
確信を持てずにいるあたしを気遣ってか、
美樹さんが慰めるようにそんな言葉をかけてくれた。

「なになに、俺に似てるヤツが知り合いにいるの?
あ、でも俺のほうがカッコいいっしょ?」
「・・・似てるみたいね」
「そうなの」
当り前のように香の横に座る柘植君の発言に、脱力する。

「ね、ね香さん、次はどこ行く?」
「ビラ配りのお礼にお茶に行くとは言ったけど、
それ以外の約束はしてないわよ」
人懐っこい笑顔で突き放しづらい。
それでも、できる限り突き放す口調になるように
心がける。

「そんなつれない事言わないでさぁ、付き合ってよ。ね、香ちゃん」
両手を顔の前で合わせて懇願する表情は、
やっぱりリョウによく似ていて、なんだか変な感じだ。
リョウなら、絶対こんなセリフをあたしに言う事ないし。


「ね、ね。いいじゃない〜お茶一杯位付き合ってくれてもぉ。
それに、君もこの店に入りたそうにしてたし。ほら、一石二鳥」
「そんなんじゃありません!離して下さいっ」
カランと入店のベルと共に、何やらもめているような
男女の声が雪崩れ込んでくる。

一気に、あたしの血圧が上がる。
男のほうはどう考えても、いつも馴染みの声だ。
条件反射的にハンマーを構え、あたしは振りかぶった。

「りょぉ〜、あんたまた性懲りもなく!」
「げ、香っ。ま、待て!その大きさは止めろ。彼女までつぶす気かっ」
その言葉に、寸でのところ所でハンマーを止める。

ハンマー越しに覗くと、確かにリョウの横で固まっている
セミロングの女性が一人。大学生くらいかしら。
「な、な、な・・・」
「本当に、ごめんなさいね。目測誤っちゃって。
天誅下したかったのはこいつだけだから」
驚きに言葉が出なくなってしまっている彼女に謝っているいると、
なぜか隣の席からひっくり返った声があがった。

「げ、理恵子!」
声をあげたのは、柘植君だった。
「へ、知り合い?」

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