リックの依頼を請けた翌日の朝、
いつもと同じように香にハンマーでたたき起こされた。
言えねぇが、仕事の事前調査してたんだがなぁ・・・
せめて、起き抜けのハンマーだけは
勘弁して欲しい。
まぁ、今じゃこれが俺の日常らしいっちゃ、らしいが、な。

そして、これまたいつもと同じように
メシを食っている俺の隣で、香のおしゃべりが始まる。

「あのね、ジョルジュが最近は遠くのほうからでも
あたしの事見つけてくれるようになったのよ♪
見つけるなり、嬉しそうに走り寄ってきてくれるし」
「へ〜へ〜それはようございましたね〜」
俺は、朝食のコーンスープと共に
ウンザリした表情を飲み込んだ。

最近、俺の遅めの朝食の時に香は
決まってヤツの話をする。
それがまた、嬉しそうときてやがる。

この所、香は朝中央公園へジョギングに行く。
キッカケは、俺の『正月太りしたんじゃねぇか?』という
いつもの軽口から。
モチロン、速攻ハンマーで潰された。
だが香自身少し気になっていたらしく、
次の日から朝のジョギングが始まったのだ。

そして、ジョルジュと香は朝の公園で出会った。
同じ時間に決まった場所に何日も通えば、
顔見知りができるのは至極当然。
「本当に、いつも朝から元気なのよぉ」
延々と続くヤツとの朝の公園での出来事。

最初俺は、ミックみたいな香にちょっかいを出す
物好き外国人かと思ったんだが、
話を聞いていくうちに間違いが判明した。

「もう本当にいつか尻尾千切れちゃうんじゃないかって
いう位尻尾振ってくれるし♪」
「へ〜ほぉ〜、んじゃ、そのまま結婚でも何でもしちまえばぁ〜。
香ちゃん相手にしてくれるヤツなんて、珍しいしぃ〜」

ドコン!!
顔にめり込む10トンハンマー。

「だから!ジョルジュは人間じゃないってこの間言ったでしょ!
失礼にも程があるわよっ!?」

そう、ヤツは・・・犬だった。
ゴールデンレトリバーらしい。
執事みたいな名前、付けやがって。ややこしい。

だが、そんな犬の話ばっかりする香に苛立ちを
覚える自分自身に...一番イライラする。


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