雪の次の日はご用心



 
「ふぅーやっぱり寒いなぁ」
あたしは、伝言版を確認しにいつもの新宿駅までの道を歩いていた。

昨日はすごい雪でそれはそれで寒かったけど、
今日は雪は止んだけど冷たい風がビルの谷間を吹き抜けていく。
ビルの谷間って風が強くなるんだよねぇ。

コートの襟を立ててその風をやりすごしてると、気分は北風と旅人。
周りを歩いてる人達も、何となく立ち向かってる感じで
親近感が湧いてくる。

道路脇の植木の上には、うっすらというよりこんもりと
積もっている雪がまだキラキラとしている。
道路上の雪は、歩く人達によって黒ずんでいるけど、
それでもたくさんの雪が降り積もった名残を十二分に残している。

「それにしても、出てくる時のリョウったら!」
出掛けに掛けられたリョウの言葉を思い出して、また腹がたってきた。
だって伝言版見に行くのは仕事なのよ!それなのに
あいつったら「昨日に引き続いて、そんな着膨れした姿を世間の人様に
さらすのか?」って言うのよ!!
失礼しちゃう!
そりゃあね、ちょっといつもよりは厚着よ?
それでもしょうがないじゃない、寒いんだから!
風邪引いたら誰が看病してくれんのよ。
いつもいつも美樹さんに頼んだら、悪いし。

ほんとはリョウが看病してくれたら、うれしいけど・・・
それとも、今ならしてくれるかな・・・?
でもあいつの事だから、渋々のスタイルは崩さなそうだけど。

つるりっ!

「えっ!?」
看病してくれるリョウを想像して気分的にホカホカしていたら、
急に足元を掬われて軽く体が宙を舞った。
転ぶっ!って思って目をつぶったけど、尻餅ついたところは全然
硬くも冷たくもなくて、心持ち高め・・・?

恐る恐る目を開けて下を見下ろすと、そこにはあたしをスライディング
して抱き止めているリョウの姿。

「リョウ?!ちょっとどうしたのよ!?」
「そりゃ、俺のセリフだ!こんな凍ってるとこ歩いてる時に何
考え事してんだよっ!!」
「ご、ごめん」
勢いに押されて、ついつい謝ってしまう。

見下ろすと、確かに雪の名残りが日陰になっている道路で
氷になってちょっとしたアイスリンクになっていた。
「せっかくの一張羅が濡れちまったじゃねぇか」
ブツブツと文句を言いながら立ち上がったリョウ。

「・・・ところで何でリョウがここにいるの?」
「あ?!いやその、なんだ・・・ただナンパに行こうと思って歩いてたんだよ!」
急に視線を泳がせて耳を赤くしているリョウに、言葉とは違う答えを見つける。
そっか、あたしの事心配してくれてたんだ。
付いてきてくれたの?

「なんだよ!にやにやと気色わりぃな」
「なーんでもない!いこ!」
「って、おい!俺はナンパに行くんだよ、誰が女連れてナンパするヤツがいるかよ!」
「はいはい」

もう寒くない、雪の翌日の出来事。
あとで、あったかいコーヒー淹れてあげるね。

fin

すごい雪ですね。皆様もお気をつけ下さいね。(^^)
どうもそそっかしい私は、雪の次の日の凍った地面が恐ろしいです。
自分が転ぶのはもちろんの事、目の前の方が倒れた時には
大声で叫んでしまう危険がありましてそれはそれで周りの方を
驚かしてしまい、怒られるのです。(^^;)


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