ミックレポート 〜2008年バレンタインデーにおける目撃〜 俺はミック・エンジェル。 敏腕新聞記者だ。 副業として、向かいのアパートについてレポートを 書いてはとある学生小説家へ提供している。 まずは、バレンタインデーの時の話をしよう。 その日は、なかなか面白いモノを見かけた。 朝早くにカオリから用事があるからと早々に バレンタインチョコを受け取った俺は、 その用事とやらが気にかかり尋ねてみた。 「高校時代の友達でデザイナーの子がいるんだけど、 彼女がリョウと一緒にホームパーティーに呼んでくれたの」 ふむ、事ある毎にカオリに洋服のプレゼントをしている 友達だな。 カオリの話から察するに彼女は世話焼きタイプで、 二人の周りに多く存在する二人の関係にヤキモキしている 友人の一人のようだ。 今日という日にリョウとカオリ二人揃ってパーティーに 招待するからには何かあるに違いない。 新聞記者の勘が、そう告げていた。 俺はカオリを送り出した後、 向かいのアパートの入り口が常にチェックできる お気に入りの書斎で本業の記事の執筆に取りかかった。 しばらくして、カオリとやや乗り気でないリョウが 連れ立って徒歩で出かけていくのを確認。 ふむ、車ではない所を見ると都内のようだ。 夕方遅くの帰宅を予想した俺は、夕方までに 戻って来れるように他の用事をリスケしたのだった。 ◇◇◇ さて、夕刻となり再び書斎でお向かいの帰宅を 待ち構えていたのだが、帰宅は俺の予想よりも 三時間程遅いものであった。 夕日のオレンジ色の光もビルの谷間に沈んでしまい、 人工的なネオンの光が夜を我が物顔で照らし始めた頃、 大型の黒塗りの車が向かいのアパートの前に止まった。 勢い良く開かれた後部座席のドアから着飾ったカオリと、 ぐてんぐてんに酔っ払った演技をしているリョウが 降り立ったのを確認する。 遠くから見て何故リョウの演技がわかるかって? チッチッチッ、甘く見てもらっちゃ困るな。 リョウとは長年飲み歩いてるんだ、 それぐらい判断するのはワケないさ。 俺は、早速偶然を装って外に出て リョウを運ぶ手伝いを申し出た。 そしてスムーズにアパートへの侵入に成功。 「カオリ、そのドレスは君の魅力を存分に 引き出してるね。是非ケープを脱いだ 所を見せて欲しいな」 「ありがとうお世辞でも嬉しい。あ、珈琲飲んでゆく?」 「ぜひお願いしようかな」 ニコニコと笑顔を向けてくれていれば、 肩に担いでるリョウから殺気を感じようとも 関係ないさ。 「じゃ、ちょっと待ってね」 「ああ、いつまでも待つよ♪」 リビングを出て行ったカオリに手をひらひらと振り、 扉が閉まるのを見計らってソファで殺気を放出している リョウへと声をかける。 「・・・いつまでタヌキ寝入りしてるつもりだ?」 「うっせぇよ」 ムックリと起き上ったリョウは、案の定 ほぼ素面だ。 「そんなにカオリにくっつきたいんだったら、 酔っぱらった振りじゃなく真面目な顔ですりゃあいいのに」 「んなんじゃねぇよ、大きなお世話だ」 おお、なんと不機嫌なこと。 「それにしても、カオリのドレス姿キュートだよなぁ♪」 「・・・ほんと、お前って物好きだよな」 気にせず言葉を続ければ、いつもの通りの憎まれ口。 「おまえねぇ、素直になれって」 「俺は素直だっ!」 ったく、天の邪鬼な友人を持つと苦労するよ。 ここは大人しく退散してやる事とする。 俺がいなくなった事でカオリが少しでも 素敵な時を過ごせるようにね。 それでも、置き土産はしっかりと置いていかないとね。 「お前さ、俺がケープを脱いだカオリのドレス姿を 見たいって言ったら殺気だったろ。もしかして、 あのケープ脱いだらお前の所業が露呈するんじゃねぇの?」 「!!っ、ば、馬鹿やろうっ。んなわけ・・・」 「じゃ、邪魔者は退散っと」 ビンゴだったようだ。 あの動揺したリョウの顔を拝めれば、 俺の一日も報われるってもんだ。 お二人さんにさらに甘いバレンタインタイムが 訪れる事を祈りつつ、その日は向かいのアパートへと 引き上げたのだった。 <<<言い訳>>> 最初はホワイトデーのミックレポを書こうと 思ってたんですが・・・なぜかバレンタインに なりました(苦笑) うーん、ホワイトデーはまんまのレポートになりそうですが、 どうしよう。。。 少しでも楽しんで頂けると嬉しいですvv 駄文に最後までお付き合いいただいた方、 ありがとうございますm(__)m |