とばっちり


かすみはアルバイトの為、キャッツへ顔を出した。
すると、カウンターで皿を拭きながら
珍しくふくれっ面の女主人の姿。

「美樹さん、どうしたんですか?」
「あ、かすみちゃん聞いてよっ!」
かすみが声をかけると、愚痴モードの
スイッチの入った美樹が口を開いた。
「ファルコンったらひどいのよ・・・」
と始まった話は、こうだ。

どうやら新年のキャッツでの営業を、
せっかくだから晴れ着を着て行おうと
企画していたらしいのだ。
そして、夫には紋付き袴を着てもらおうと
思っていたらしい。

そこでかすみに相談する前に、夫である海坊主に
相談をしたところ、本人の紋付き袴は真っ先に
却下されたらしい。
自分サイズはすぐには用意できない
という夫の意見ももっともだったし、
そこまでは美樹も予想した通りだった。
そして大人しく引き下がった。

だがその後、海坊主はボソリと
『お前も、振袖は駄目だ』
と言ったらしいのだ。

理由を聞いたらしいのだが、赤くなって着てはいけないの
一点張りで、美樹としては着たいと思っていた
着物を駄目だと言われ、しかも理由もわからず
ご立腹だったらしい。

「ね?ひどいでしょ?」
しゃべりながら、その時の怒りにさらに油が注がれて
しまったらしく、表情はすでに憤慨モードだ。

海坊主さんったら、ちゃんと説明すれば問題ないのに
なんでしない訳・・・?
かすみは夫婦の痴話ゲンカに少々あきれながら、
仕方なく仲裁役を買うことにした。

「海坊主さんは『振袖は駄目だ』って言ったんですよね?」
「ええ、そうだけど?」
「美樹さんは、確かに『振袖』は着れないと思いますよ?」
「え?なんで!?」
「・・・だって、既婚者は『振袖』着れないですから」

「!!・・・もうファルコンたらぁ、それならそうと素直に
言えばいいのにぃ〜」
一気に、空気の色まで変わる店内。

「ね、ね。かすみちゃん、じゃあ既婚者が着れる着物ってあるの?」
「留袖なら着れますよ」
「じゃ、それにしましょ♪」
しばらく、甘い雰囲気がキャッツ内を覆ったのは言うまでもない。
かすみは、今後も引き起こされるであろう
海坊主の説明不足による痴話ゲンカを思い、
できる事なら巻き込まれないと、小さくため息をついた。


<<<言い訳>>>
振袖の事を美樹さんが知らないかどうか微妙
ですが、まそれはそれでネタにならないので
軽くスルーで(苦笑)
海坊主さんは絶対こだわる気がして。
駄文に最後までお付き合いいただいた方、
ありがとうございますm(__)m

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