俺はミック・エンジェル。敏腕新聞記者だ。 本業とは別に、趣味と実益を兼ね備えた依頼を とある学生小説家から請け負っている。 『シティーハンター二人の甘いエピソードをレポートし、 提出する』 それが、俺が請け負っている副業の内容だ。 しかし、リョウの妨害もあからさまになった事もあり、 このところ収穫は少なく、クライアントからは 文句をつらつらと連ねたメールがスパムメールのように 連日送られてきている始末だ。 クレームというのは、やはり気が滅入る。 俺だって、趣味を全うできなくて欲求不満だ。 疲れた時には、人間リフレッシュが必要だ。 夏と言えば海。海といえば水着。 そこまで考えたところで、俺の頭の中はバカンス一色 に染まった。 よし!気分転換に海に遊びに行こう!! ということで、愛しのカズエを誘ってみる事に。 「じゃあ、せっかくだからみんなで行く?」 リビングでそう言いながら見上げてくる カズエの笑顔が、まるで女神様だ。 オー!グッドアイディアね♪ バカンスと副業に役立つその提案に、 視界が一気にひらける。 そんなおいしいシチュエーションを逃すなんて、 敏腕記者の名が廃る。 しかも、俺はカズエとカオリの水着姿が見れて ハッピー。 疲れたなんて言葉は、吹っ飛んでいた。 俺は、すぐにミキとカオリに連絡を入れる。 そして、来週の日曜日の約束を取り付けた。 だが、やはりここに現われたるは、このプランの妨害者。 もちろん、カズエからこの提案をされた時に すでに想定できた。 『リョウが、どーしても首を縦に振ってくれなくて』 『行かねぇったら行かねぇからな!!』 受話器の向こう側からは、困りきったカオリの声と、 駄々っ子のように声を張り上げるリョウの声。 カーテン越しに向かいのアパートを見てみると、 小さく手を振るカオリの困り顔。 「ちょっとリョウに変わってくれるかな?」 『・・・んだよ』 受話器越しにごちゃごちゃと揉めた後に、 少しふて腐れた声のリョウに変わる。 「リョウ、お前そんなに愛しいカオリの水着姿を 他のヤツに見せたくない訳?」 まずは、軽い揺さぶりの為に先制口撃。 『ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ!!んなわけねぇだろ。 勝手に行きゃあいいんだ!俺は、行かねぇって言ってんだ!』 声の動揺が、受話器越しでもわかる。 ったく、カオリが一人だけで行くとは言わない事をいい事に 隠れ蓑にしやがって。 素直じゃない親友に、ついついため息。 『あ゛?お前今なんかムカつくため息つかなかったか?』 「いや、気のせいだよ。気のせい。カオリ、デザイナーの友達から 素敵な水着もらったそうじゃないか。連れてってあげないと 可愛そうじゃないか?それに、お前ら夏らしい旅行してない、だろ?」 まずは、カオリが可愛そうと情に訴えてみる。 『なんで、俺がんなもんに付き合わねぇといけねぇんだ!』 即効返ってくる、怒鳴り声。 受話器から耳を離す。 ま、天邪鬼なリョウらしい反応だな。 本当はカオリだけ連れていってもいいんだが、 どうせリョウが隠れてくっ付いてくるだろう。 レポートを書くのなら、後ろからコソコソ ついてこられるよりも一緒に行った方が 都合がいい。 そこで、説得方法を変えてみる。 「まぁまぁ、そう怒鳴るなよ。実はなリョウ、耳より情報が あるんだが・・・お前の好きなお天気お姉さんがいたじゃないか。 えっとあやめちゃんだっけ?」 『それが、どうした』 「どうやら、レポーターとして来週の日曜日に海岸に 来るらしいぜ。もちろん、水着で、なv」 『ぬあに〜!なぜそれを先に言わん!あ゛・・・』 ほら、食いついてきた。 「んじゃ、お前も行くな♪」 罠は、とじられた。 『ぐ、あ゛・・・』 「だって、あのあやめちゃんが水着だぜぇ〜?」 あえて、必死に理由をつけて断ろうとするリョウの苦しげな 声に気づかない振りをして、さらに追い討ちをかける。 『ああ!!わかったよ!行くよ行きゃあいいんだろ?!』 「そうそう。お前の好きなあやめちゃんの水着だもんなぁ〜v」 あいつが素直にカオリの水着姿を他のヤツに見せたくない、とは 言えないのと同様、普段好きと言って憚らないお天気お姉さんが 来るというのに、行かないなんて言えねぇよなぁ〜♪ それ以上の理由が、必要だ。 『ミック、どうやってリョウの説得したの?』 「それは新聞記者の企業秘密、さ。じゃ、来週」 交渉に成功した俺は、意気揚々と電話を切った。 そして、もう一本電話を入れた。 もちろん、俺の大切なクライアントにね。 楽しい夏の旅行になりそうだ。 それでは、君らもHave a nice summer vacation!! <<<言い訳>>> CHメンバーににぎやかに海に行ってほしくて、 ミックにひと働きしてもらいましたvv 久々にミックの勝利、かな?(笑) 一応この続きを考えてますので、そのうち書くかも しれませんv このたびは拍手ありがとうございました♪ |