*『夜に溶けた酔っ払い達の呟き』の続きですv

腕の中にあたたかい温もり。
腕と頬に感じるそれは、あたしを安心させた。

まどろみの中目覚ましに追い立てられる事もなく、
漂う幸せを満喫する事を助長する。
今、あたしは寝ている。

意識が眠りからゆっくりと覚醒へと向かうにつれ、
感覚的なものから論理的な思考へと切り替わってゆく。

昨日は、リョウの言葉に勝手に傷ついて飛び出して、
恐る恐るアパートに帰ってきてリョウが出かけてて
気まずい思いをせずにすんだ事にほっとして、
そのまま寝てしまったんだった。

時々リョウにとっては何気ない憎まれ口に過剰反応してしまう
自分が、あまりにイヤだった。
今日は、リョウといつもと変わらず顔を
合わせられるだろうか・・・

そろそろ起きて、朝ご飯の準備をしなくちゃいけない。
意識は、昨日から今日の出来事へと切り替わってゆく。

・・・ん?
腕に抱き込んでいた枕が動いた気がして、
あたしは目を開けた。


!!?☆@×


叫び声は、驚きと共に大きく飲み込んでしまった。
目の前には昨日気まずくて顔合わせたくないと思った
リョウのどアップ。

眠気は、すっかり飛んでいってしまった。
ど、どうしてこの状態に?

リョウの寝顔を見つめ続ける。
というより、頭は空回りしながらでもフル回転してたけど、
身体はフリーズに近かった。
だから、視界がリョウから外れない。

!?

突然リョウの瞳が前置きもなく開き、
黒く引き込まれるような瞳と視線があう。

「ふぁ〜よく寝たぁ。もう朝かあぁ?」
大きく伸びをするリョウ。
「な?!な??こ、こに!?」
再び一気に感情が沸騰し、言葉が出てこない。

「あ〜、なんか酔っ払ってここで寝ちまったみたいだな、
わりぃわりぃ」
首をコキコキと回しながらのリョウの言葉は、
小憎らしい程落ち着いてる。
いつもの、リョウだ。

「・・・香」
「な、なに!?」
あたしはまだ今の状況についてゆけず、
声が裏返ってしまう。


「腕、いい加減離してくれねぇ?」
「そ、そうね!そうよね!」
今まで抱き枕よろしく抱き締めていたリョウの腕を、
慌てて離す。
そして、ベッドの上で跳ねるように上半身を起こした。

「そんな、投げ捨てなくても。
リョウちゃん傷つくなぁ」
「ご、ごめんってばっ・・・って、あんたが勝手に
あたしの部屋に入ってきたのが悪いんじゃない!」

「・・・なぁ香〜、リョウちゃんお前のせいで肩こっちまった。
この落とし前、どうつけてもらおっかなぁ〜♪」
全くこっちのセリフを聞かず、輝かせた目をこちらに向けた
リョウの笑みは、いたずらを思いついた子供そのもの。

「な、なに・・・?」
その笑みに危険なものを感じ、反射的に身構える。
リョウの笑顔が近づいたかと思ったら、
身体が回転させられ、視界は枕により遮られる。

「ぶっ、んぶ!?」
「んじゃまぁ、せっかくだからぁ、リョウちゃんの護身術講座〜v
肩と手首を押さえつけられると暴れても、簡単には動けな〜い。
人間の手は前にしか動かねぇからな。いい勉強になっただろ〜?」
「んっ!んんっ!!!」
「・・・」
バタバタと暴れようにも、上半身は動かせず、
足を丘にあがった魚よろしく
バタつかせてみても全く効果がない。

「んじゃ、これぐらいで許してやるか。俺って優しいなぁ。
罰なのに、役立つ情報提供してやるなんて。
香、腹減ったからメシ早くなぁ」
「っぷはっ!な〜にが許してやるよっ!バカっ!」

背後からの押さえつける力がフッとなくなり、勢いよく
ベッドから起き上がって枕を投げつけたものの、
それは閉まった扉に当たって落ちた。

押さえつけられた時に耳を掠めた言葉は、謝罪の言葉。
言い過ぎたって言いたいんだったら、
素直に言えばいいのに。
クスクスと、笑いが込み上げてくる。
って、素直になれないのは、あたしも同じか。

「香、メシ〜」
「はいはい、大人しく待ってなさいってばっ!」
落ち込んでた気持ちは、綺麗さっぱりもうない。
ちょっとした事で、悲しくなったり嬉しくなったり。
そして、今日は晴れだ。


その頃、扉の向こう側でうずくまって溜息をつく
男が一人。
「なんで、こんな時に限ってハンマー出ねぇだよ。
・・・あせった」


<<<言い訳>>>
なんか、去年の今ごろに書いた海岸物語
の香ちゃんバージョンになっている
ような気もしますが・・・
ま、ご愛嬌ということでご容赦を(^^;)>
駄文に最後までお付き合いいただいた方、
ありがとうございますm(__)m

Back