それこそが、プレゼント



もうすぐリョウの誕生日。
この時期になるとどうしてもいつも悩んでしまう。

議題は、いつも同じ。
『何をプレゼントしたらリョウは喜んでくれるんだろう?』

いくら一緒にいるだけでいいと言われていても、
やっぱり何かプレゼントしたくなってしまう。

リョウの子供時代を思うと、
ワクワクとプレゼントを待つ気持ちを、
今からでも味わって欲しい。
そう思うから、うちの家計じゃそんな大それた物は
あげられないけど、毎年何かしらプレゼントを用意している。

さて、今年はどうしよう。
アクセサリーは・・・つけてるの見たことないし、
興味なさそうよね。
それに、見た目までこれ以上チャラチャラさせたら
ますますナンパなヤツになってしまう。
それに、銃撃戦とかで邪魔になりそう。・・・却下。

やっぱり喜んでもらえるものの方がいいなぁ。
リョウの喜びそうなものっていったら・・・
あの手の雑誌とかビデオ?
う〜ん却下。
確実に喜びそうだけど、
買いにいくのも抵抗あるし、
プレゼントするのもイヤだ。
じゃあ、後何があるかな?

喜ぶもの・・・デートしてくれる女の子?
これも却下!
なんであたしが、あいつに女の子を
調達してやらなきゃいけないのよ!
すでに物じゃないし!
物欲はないクセに、なんでこの手のものは
ポンポンとあがってくる訳?!


「・・・カオリ、想いが口からこぼれてるよ」
「へ?!」
突然思考にコメントをつけられ、
イスから落ちそうになりながら横を向けば、
隣には苦笑しながらこちらを見ているミック。
そして、カウンター越しにミックと同じ表情を
浮かべる美樹さん。

プレゼントを考えてるうちに
すっかり、キャッツにいる事を忘れてた。
一気に顔が真っ赤になってゆくのが、
自分でもわかる。

「・・・どの辺から口に出てた?」
「『デートしてくれる女の子』辺りから、かな」
見回して、とりあえず2人以外お客さんがいない事を
確認して、安堵の溜息。
とりあえず、他の人には恥をさらさずにすんだみたい。

「リョウへのバースデープレゼントかい?」
「そうなんだけど、いいプレゼントが考えつかなくて」
「リョウには、カオリが一番のプレゼントだと思うけどなぁ。
ほらリボンを首に・・・グゲェ!!」

「ミック、そんなのリョウが喜ぶ訳ないじゃない」
ミックがあまりにありえない事言うから、
つい顔にミニハンマーを叩き込んでしまった。
「あら、喜ぶと思うけど?」
美樹さんまでニコニコとそんな事を言うキャッツ店内は、
一気に居心地が悪くなってしまった。

「ちょ、ちょっと伝言板見てくるね!コーヒーごちそう様!」
だから慌てて席を立って、挨拶もそこそこに店を出た。
リョウが、喜んでくれるものを探しにいかないと。
赤くなった頬をパチパチと叩きながら、
新宿の街の人ごみに紛れた。

     ◇◇◇

「やれやれ、照れて出て行ってしまったか」
「ミックがからかうからでしょ?」
「いやぁ、真実を述べただけなんだがなぁ」
ミックは慣れた手つきで顔を潰していたミニハンマーを
カウンターに置き、(お、置けるの・・・?)
首をコキコキと元に戻しながらコーヒーをすする。

「・・・それに、ああやってリョウの為に
カオリが何プレゼントしようか悩んでる時間こそが
一番のプレゼントだろうぜ」
「ふふ、そうねv」

その時、キャッツに入ろうとしていた
香を悩ませている当の本人は、
野生の勘で何か感じ取ったらしく
店に入るのを取りやめたらしい。



後日のミックレポートより抜粋>>

カオリは、結局悩みに悩んだ末、お財布をプレゼントしたらしい。
お財布は、自分で買うよりプレゼントされたほうがいいと
どこかで聞いたらしい。

そして、もう一つの考え抜いた末のカオリのプレゼントは
『誕生日当日は、どんなことをリョウがやっても怒らない』こと。

口に出さずに実行したカオリは、
アルタ前でいつものごとくナンパを繰り返していたリョウの前を
笑顔で通り過ぎたらしい。
ハタから見ると、どう見ても口元、目元に引きつりが
あって無理があったが・・・

それが、リョウにも異常に映ったらしい。
慌ててカオリを追いかけ、洗いざらい最近のツケやら
成功したナンパやらの悪事を並べちまったらしい。

そして、みごとにカオリのハンマーの餌食になっていた。

大きくあいたハンマーの穴とリョウの人型は、
『墓穴を掘った』という日本語の語源のようであった。

親友の誕生日とは、おもしろいもとい喜ばしいものである。


FIN
リョウ、お誕生日おめでとうvv(^^)
この時期は毎年バタバタしてたせいで
なかなかお祝いできてなかったのですが、
今年はなんとかアップできました♪
ちょっとでも楽しんでいただけると、嬉しいですv


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