俺はミック・エンジェル。
敏腕新聞記者だ。
本日俺は、新聞記者として都心の
祭りの記事を受け持つことになった。
そして、今日はカメラマンも兼任だ。
昨今の人手不足がこんなところにも、
ってところだ。

ま、この手の記事は他のスクープ記事が
あればすぐに差し替えられちまうし、な。
あ、誰だそんな3面記事しか任されてないのに
敏腕なんてのは嘘だって言ってるヤツ!
それは、他の俺の記事も見て確認
してから発言してくれたまえ。

それに、今回の記事は俺が進んで立候補したのだ。
ぐふふ、なぜならカオリがこの祭りで
神輿を担ぐと聞いたからさ。
俺は早速カメラ片手に、祭りへと向かった。

そして、カオリを含めた祭りの写真を数枚撮った後に
発見したのは、あの天の邪鬼な元パートナー。
これはこれは。
また面白いものが見れそうだと俺はほくそ笑んだ。

俺は、兼業として某小説家から『シティーハンターの
甘いエピソードをゲットせよ』という依頼を
請けているからね。

リョウを観察すると、奴はカオリに気付かれないように
この周辺のカオリファンクラブを自称する俺の同志達
に殺気を送っては、追っ払っているようだ。

俺は我慢できず、リョウに声をかけた。
「ほぉ、お前も神輿見物か?」
ついつい口元が緩むのが、抑えきれない。
「・・・んあ?俺はモッコリちゃんがいないかなぁと
思ってな。お前は、まるで外国人観光客だな」
「取材だ。取材。それに、なんとカオリが神輿を
担ぐって聞いたからな♪」

「ったく、物好きめ」
「んなこと言いながら、しっかり悪い虫の排除に
精を出していたようだが?」
図星をつけば、決まり悪げなリョウの表情。
この瞬間が、たまらない。

「な〜んのことだぁ?さぁて、お目当てのモッコリちゃん
には出会えなかったし、僕ちゃんそろそろ帰ろっと」
「まぁ安心しろ。俺がカオリの事はし〜っかりガード
してやるから♪」
形勢不利とみると、リョウはこの場を逃げ出した。

だが、俺はリョウにカオリを写真に収めている事を
気付かれちまった。
カオリが絡むと、リョウの独占欲はすさまじいからな。
逃げ出したアイツの後ろ姿を見ながら、
このカメラの写真を守る保険をかける事を、
俺は心に決めたのだった。

◇◇◇


仕事と趣味を兼ね、日本の文化を
そしてカオリを満喫した俺だったが、
一つリョウに言ってやりたい事があった。

カオリは、リョウのせいで肩に怪我したのだ。
背のすらりと高いカオリが一般女性と共に
肩を並べたら、その肩が神輿の担ぎ棒で
傷つけられてしまうのは自然の理。

カオリが祭りを楽しんでいたから良かったものの、
カオリの周囲の俺の同志をリョウが脅さなければ、
怪我しなかったはずなのだ。
カオリの柔肌に傷をつけるなど、
なんという事だ。
この憤りは、一言文句を言わないと
治まりそうにない。
俺は、その足ですぐに冴羽アパートへと向かった。

勝手知ったる他人の家。
俺はすぐにリビングの扉を開けた。
二人がいるのは、気配でわかっているしね。
「おい、リョウ!・・・OH!」

目に飛び込んできたのは、肩を露わにした
カオリの艶姿。
先程半纏というものはなんと粋なものだと
感激したんだが、色気を醸し出す事も
出来るというのは新しい発見だった。
いや、これは日本の衣服、着物に共通することか?

「・・・なんか、用か?」
俺が日本の衣服文化について頭の中で討議していると、
不機嫌そうなリョウの声が割って入る。
そして、その間にそそくさと
カオリの白い肌は隠されてしまった。
What a shame!

せっかくのシャッターチャンスだったが、
ま、今シャッターを切ったらリョウに抹殺されるのは
目に見えてるしね。目に焼き付けるだけで留めておくさ。

リョウの手には救急箱。
なるほど、治療していたってわけか。
俺は、このアパートを訪れた第一の要件である
カオリの怪我について追求する事は免除して
やる事にした。
俺から逸らしたリョウの視線も、ヤツの後ろめたさを
裏付けてたしね。

だが、ここに来た理由は一つじゃない。
俺はもう一つの要件の為、カオリに話しかけた。
「カオリ、今日は神輿担いで楽しそうだったね」
「あれ、ミックもあの場にいたの?」
肩を晒してしまって少し恥ずかしそうに
していたカオリだったが、気にしていない風を装った
俺の話術にいつもの調子で返してくれた。

「祭りの記事を書かなきゃいけなくてね。
それに、今回は人手不足でカメラマンも俺がやったんだ」
「カメラマンも?じゃあ今首にかけている一眼レフで撮ったの?」
「そうだよ。カオリの神輿を担いでいる素敵な姿もね。
だから、後でしっかり焼き増ししてプレゼントするからね」
「ありがとう」
カオリの嬉しそうな笑顔は、俺にとっていつも魅力的なご褒美だ。
そして、これでこのフィルムの大切な保険となる。

カオリが楽しみにしているフィルムを、
末梢させるなんてリョウにはできないからね。

歯噛みして悔しがるリョウを視線の端に、
俺はほくそ笑んだ。
保険は、やっぱり大切だね。

ではでは皆さん、See You!!


FIN

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