懐かしい場所



懐かしい場所
それは想いが残る場所

「リョウ、今日ヒマ?」
突然、香が上目遣いで朝食を(いや昼飯か?)食っている時に
そう聞いてきた。
こいつの上目遣いに俺は実はかなり弱い。
もしわかっててやってるんだったら質が悪いよな〜
「なんかあるのか?今日」
逆に質問で返してみる。
すると少し困ったように曖昧な表情の香。
「うーん、今日じゃなきゃいけないって訳じゃないんだけどね、
天気もいいし久しぶりに行ってみたい所があるの」
「一体どこだよ?」
「うん、あのね都庁」
「あーん?いつも見てるじゃねェか」
「そうなんだけど、ね、なんとなくさっきアニキの事思い出して
行きたいなぁって」
「え?おまえ槙村と都庁行ったことあんのか?」
確か槙村が逝ってから都庁って建ったような気がするが・・・
計算が合わないぜ、香。
俺のいぶかしげな表情に気付いた香は、顔の前で手をひらひらさせながら否定する。
「あ!ううん、アニキとは都庁には行ってないよ。行ったのは都庁が建つ
前の空き地。あの空き地にね、サーカスが来た時にアニキに
連れてってもらったの。なんか懐かしくなってね、行きたいなぁって」
ほんと槙村との思い出話をする時の香って、うれしそうだよな。
こいつ気付いてるか?自分が普段より1トーンくらい高い声で槙村の話するって。
正直おもしろくなくて、逝ってしまった親友にまでこんな感情を抱く
自分自身にもおもしろくなくて、ついつい意地悪な言葉が出てくる。
「なーんでそんなトコに俺が付き合わなくちゃいけないだぁ?リョウちゃん忙しいの〜」
「どーせ、ナンパで忙しいって言うんでしょ!それだったら付き合ってよぉ」
またまた上目遣い。今回香はどうしても行きたいらしい。
誰だこいつにこの表情教えたヤツ〜!


 *  *  *  *  *  *  *


結局香の上目遣いには勝てず、俺は渋々の体裁を整えつつも香と共に都庁に行った。
「うわーなつかしぃーー(^^)」
あいかわらず上機嫌の香。
まぁこいつのこの笑顔見れるんだったらま、いっかと思える。
「歩いていける距離なんだから、一人でも来れるだろーが」
それでも出てくる憎まれ口。
「だって一人で都庁見上げてニコニコしてたらおかしいでしょー?」
「掲示板のXYZ見て固まってる誰かさんよりはおかしくないんでない?」
「////だって、それはあまりにいつも依頼が少ないからじゃない!!」
「へー、へー」
「・・・それに、リョウと来たかったんだもん」
妙にかわいい事言うじゃねぇか。
「香、展望室行ってみるか?」
あまりのかわいさについつい甘い言葉を言ってしまう。
ま、口が裂けても恥ずかしすぎてそんなこと香には言えねーけどな。

展望室のある階までエレベーターで一気にのぼると、目の前に広がる
青空と新宿の街並み。
「すごーい、晴れてるからかなり先まで見える!ね、リョウ。
あ、あれ東京タワーだ!」
子供のようにはしゃいでいる香の後ろからゆっくりと眼下の景色を見下ろす。
俺にとっての懐かしい場所が小さく見える。
過去を振り返らず今を生きるのが俺のモットーだが、
あえてどこを懐かしいと問われたら迷わずこの街を答えるだろう。
俺を変えてくれたこの街。
いろいろな街を流れてきた俺に、根をおろさせた街。
現在進行形の懐かしい場所。
そんな想いは恥ずかしすぎて口には出せないから、
俺は懐かしい場所となりえる要因をそっと抱き寄せた。

fin

CH2のエンディングの『STILL LOVE HER(失われた風景)』と共に流れる新宿の ビル群と作りかけの都庁。
で、本当にその前は大きな空き地だったのです、あそこって。
そして、あの辺りの盆踊りの時とかサーカスが来た時とかに使用されていました。
実は私、子供の頃あの辺りに住んでいたのです。
その後父の仕事の関係で千葉に引っ越しましたけど、ね。
だから、初めてCH2のエンディングを見た時は
あの新宿の景色がなつかしいなぁってそっちのほうが強かったような(^^;)
そしてだいたい舞台は歌舞伎町側だったけど、たまーに戦闘シーンとかで
中央公園とか出てくるとうれしかったり(^^)
あの頃はまさか再度高校の時に再放送見てはまって、HP作るとは
思ってなかったなぁ・・・(−−)


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