子供の日と対になる日



今日の依頼は(も、か?)気にくわねぇ。

こんなのスィーパーの仕事じゃねぇ!と
依頼がきた時点で香に訴えたが、
冴羽商事の家計状況を印籠よろしく振りかざされると、
さすがの俺も抵抗しきれなくなっていた。

これも惚れた弱み、か。
ま、二人して干からびるのはさけてぇしな・・・

そしてしぶしぶ受けた依頼は、ようはガキのお守り。
しかも危険があるからとかそういうのではなく、
両親が沖縄の友人の結婚式に出るのに子供を
連れて行くと大変だからなどという
緊張感の欠片も無い理由だ。
ったく、連れてけよな。

しかも、そのガキが可愛げがねぇ。
俺に対してはそっけねぇ癖に香にはべったりと
甘える。
「香おねぇちゃん」と言って足元に抱きついては
抱き上げてと強請り、抱き上げられてから必ず
ちらりとこちらを得意げに見やがる。
なぁにが香おねぇちゃんだ。こいつ、ぜってぇ確信犯だ。

今も香の膝を陣取って頭には紙で作った兜を被って昼寝中。
くそぉー、俺でさえドサクサにまぎれた時しか
ありつけねぇのに。

「香ぃ〜、コーヒー」
「何言ってるの、今膝の上で健君が眠ってるのに無理よ。
自分でやって」
「つれねぇなぁ〜、新しい男ができると、女ってぇのは変わるよなぁ」
「な、なに言ってんのよ!・・・もしかして子供にヤキモチ?」

「バ、馬鹿言ってんじゃねぇよっ!誰が男女の膝取られた位で
ヤキモチ焼かなきゃいけねぇんだよ!」
「なんですってぇっ!!さっさと自分でコーヒー淹れればぁ?!
あと、静かにしてよね!健君起きちゃうからっ」
「お前の方が声でかいっつうの」
「うるさいっ!」
「へぇへぇ」

図星を香に突かれて、ついちゃかしちまった。
「そうよね、あんたがそんな事でヤキモチなんて焼くわけないわよね・・・」
だから、そんな囁きは俺の胸をちくちくとつつく訳で・・・

リビングの扉のところから、自分でも馬鹿らしい話題を振ってみた。
「なぁ・・・子供の日はあるけど大人の日ってねぇよな?不公平じゃねぇ?」
「え、何?」
「だぁかぁら、今日は子供の日だろ?ようは子供が大手を振って
我侭言える日って訳だろ?じゃ大人の日ってねぇのかなぁって」
「何それ?・・・うーんでも、そう言うんだったら勤労感謝の日は?」

最初呆れ顔でこちらを見返したくせに、しっかりとマジメに答えやがる。
香らしいといえば、らしいか。
「んじゃ、勤労感謝の日は俺の日なっ!」
「なーに言ってんの?労働しないヤツが」
「いんや、リョウちゃんが決めたって言ったら決めた!」
「はいはい、勝手にして。でもやめてよね〜、無茶な要求は」
呆れたような笑顔でも、悲しい顔をされるよりよっぽどいい。

今日は子供の日。
仕方ねぇから、今日はあのガキに貸してやろう。

とりあえず今は、動けない香の分と二人分のコーヒーを淹れに
キッチンへと向かおう。
大人だから、な。

だが、勤労感謝の日は俺の日だからな、香。
自然ににやけそうな顔を、誰に見られてるわけでもないのに、
慌てて立て直した。



さて香の運命やいかに?

それは・・・
神様と、二人のみぞ知ること♪


fin

子供にまでヤキモチ妬くリョウが
書いてみたくて・・・こんなんなりました(笑)


Back