いつもいつでも〜Christmas version〜
「香〜腹減った。飯〜」
見事にいつもの日課であるナンパでもっこりちゃんに
くっきりと手形を頬にもらってしまった俺は、
声を張り上げてアパートの扉をくぐった。
もちろん、香の気配がアパート内にあるのは確認済みだ。
だがいつもこの時間ならキッチンで動き回っているだろうに、
今日はまだリビングにいるようだ。
「お〜い、か・・・」
「あ!扉ゆっくり開けてっ」
リビングに入ろうとした俺の足元に転がってきたのは、
星のオーナメント。
ゆっくりと扉を開けながら声がしたほうを見上げると、
脚立に乗って香がツリーの飾り付けの最中だった。
いい眺めだ。目線とほぼ同じ高さにある太ももを、
顔には出ないように満喫する。
「もう出したのか」
「もうってすでに12月だし。クリスマスはもうすぐだって。
あ、リョウそれ頂戴」
転がってきた星を香に手渡すと、ツリーのてっぺんに飾られた。
「よし、後はちっちゃなオーナメントつければ完成っと」
「・・香〜俺腹へってんだけど」
まだまだ飾り付けを続けそうな香を、鳴るお腹を指差しながら
見上げる。
「あ、もうそんな時間なんだ。じゃ、後は夕飯の後にしようかな」
すっかり時間を忘れていたようだな。
それにしても、俺が起きてきた昼過ぎには、
全くツリーは出されていなかったはずだ。
これ、一人で飾ったにしては早くねぇか?
「なぁ、これお前一人で飾った訳?」
「え?ううん。ちょうど遊びに来たミックが手伝ってくれた」
・・・・・・
「ん?何、リョウも飾りつけしたかった?」
「ば、馬鹿言うんじゃねぇ!誰がっ」
「そうよねぇ、あんたがねぇ」
人の複雑な気持ちも知らねぇで、カラカラと笑う香が憎たらしくなる。
そして、香がミックと一緒に仲良くツリーを飾りつけしてたのが
おもしろくないと感じちまう俺自身にも。
「・・・それより、飯は?」
「今準備するから、ちょっと待ってったら」
ぐらり
「おまっ!あぶねっ!!」
脚立から降りようとした香の身体が、大きく傾いだ。
重力に従って降って来た香の身体を、慌てて抱き止める。
ガタンッ
ガタガタッ
ふうぅ〜
無事キャッチできた事に、安堵する。
「おい大丈・・・」
「あ〜!!ツリーがぁ〜!!」
香は俺の言葉を完全に無視し、俺の胸の上で勢い良く上半身を起こすと、
大声をあげた。
視線の先には香が蹴ってしまった脚立と共に倒れてしまったツリー。
飾りは散乱してしまっているが、壊れてはいないようだ。
壁や他の物にぶつからなかったのも、幸いしたようだ。
「ったく、自分の心配より、ツリーかよ。壊れてねぇから
良かったじゃねぇか」
痛めた所がなさそうだとわかると、口から飛び出てくるのは
憎まれ口。
「そうだけど・・・もう少しで終わりだったのに」
俺の胸の上で、悲しそうにツリーを見やる香を見上げていると、
あまりの無防備さに抱きしめてしまいそうになる。
それでなくても、上体を支えている香を見上げている
今の状態で、彼女の体の重みを全身で味わっている状態で、
変な妄想するなと言うほうが無理な相談っていうものだ。
「また一から飾りなおしかぁ」
こっちは理性を総動員しているっていうのに、
なおもツリーを気に掛け続けている香。
「あー、わかったって!俺が後で手伝ってやるって!!」
「ほんとっ?!」
だぁ〜!!!だから思いっきり伸し掛かったまま
こっちに笑顔を向けるなって。
この生殺し状態から早く抜け出したくて約束した言葉が、
さらに己の首を絞める。
「だからっ!早く飯にしてくれって。腹減ってんだよっ」
「わかった、すぐ準備するねっ」
泣いたカラスがなんとやらだ。
俺から離れてしまった香の重みを、物足りないと感じてしまい
腕を伸ばしかけ、慌てて下ろす。
俺が、こんなにいつもお前の行動一つで、
内心振り回されているなんて、お前は
これっぽっちも思ってもいねぇだろうな。
あんま無防備すぎると、俺の理性なんていつでも
切れちまうぜ。そうしたら・・・
「・・・そのうち襲うぞ?」
「え?何?」
「んでもねぇよっ。早く飯な」
いつもいつでも、女の扱いについては自信のあった
この俺が、こいつの前では調子狂いっぱなしだ。
それは、クリスマスだろうがいつだろうと変わらない。
そして、飯の後ツリーの飾り付けを渋々の体で手伝った時、
俺と一緒に本当は飾り付けしたかったなどと言う香に、不覚にも
『んだったら、最初から俺に言えばいいだろ、ミックなんかに頼まずに』
などと失言しちまった俺は、もう軌道修正不可能なんだろう。
いつもいつでも、・・・・・なんだろうな。
口にはできねぇが。
FIN
2007年クリスマスはクリスマス準備のお話にしてみました(^^)
本当はもうちょっと早くアップできればよかったのですが、
いつものこととご容赦を(^^;)>
最後のリョウの言葉は、ベタな言葉をご想像下さいませv
では、今年も素敵なクリスマスをお過ごし下さいませ♪
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