あなたの名は…〜おまけ〜



「・・・リョウ、さっきはごめんね?」
一通り日課のナンパをした後アパートに戻ると、
香がコーヒーを持っておそるおそる謝ってきた。
「ほーんとさっきの香ちゃんの言葉、リョウちゃん傷ついたなぁ〜」
それほど傷ついてなどいなかったが、ついつい香をからかいたくなって
少し背中を向けてみる。
「本当にゴメンなさいっ。夕飯奮発しちゃうから、ね?」
なんかそれは飯に釣られるようじゃないか?
おもしろくなくてさらに背中を丸めてみせる。
「メシなんかじゃ、傷心のリョウちゃんの心は癒せないなぁ」
「…いつもだったらほいほい乗ってくるのに」
「ん?香ちゃんなんか言った?」
「ううんっ!じゃ、なんだったらいいかげん機嫌直してくれるのよぉ」
困ったような上目遣いの香と、視線が正面からぶつかる。
それを見て俺の中の悪戯心が勝手に身体を動かし、香の腰を抱き寄せた。
「…んじゃまぁ、香ちゃんに優しくされたら機嫌直るかもよ?」
「//////リョウ」
「…なーんてな。リョウちゃんやっぱしメシの方がいいかなぁ♪」
「…わかった。夕飯用意してくるね」
パタパタとスリッパを鳴らしながらリビングから出て行く香。

まだまだ俺達には、というか俺には甘い時間は気恥ずかしくて浸りきれない。
少しさびしそうな香の表情に心をしめつけられながら、
腕の中からすり抜けてしまった暖かい感触に気付かぬ振りをしてしまう。
素直になりきれない俺。
抱き寄せた腕に残るぬくもりを見つめながら、小さくため息をついた。


fin
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