輝く気持ち



カラン―

「こんにちはぁ」
「あら、香さんいらっしゃい♪」

今日はホワイトデー。
先月勇気を奮って告白した女の子達に代わって、
今度はいつもぶっきらぼうな男の子達がお返しをする日。

「コーヒーでいいかしら?」
「うん、おねがい」
いつものカウンター席に座る香さんは、
心持ち肩が落ちている。

「今日も、依頼なかったんだ?」
「うん。この間依頼があったから、家計はなんとか
なってるんだけどね」
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう」

白磁のお気に入りカップにキャッツオリジナルブレンド
のコーヒーを注いで、香さんの前に差し出す。
店内に広がる、コーヒーの穏やかな香り。

「・・・で、冴羽さんからのお返しはもうもらったの?」
「へっ!?」
飲みかけたコーヒーを噴出しそうになりながら、
みるみる香さんの顔が真っ赤になってゆく。

彼女が今日ここに来た時から、聞きたかったのよねぇ。
表情を見れば、答えはわかりきっているけど。

「もう、もらったみたいね♪」
「////」
本当はもうちょっと詳しい事聞きたいけど、
これ以上はヤボってものかしら。

でも、その小指にしている指輪は何かしら?
初めて見かけるアクセサリーって、
意外に女は見ているものなのよ。

何かに引っ掛からないよう、伏せ込みで
石留めめされているダイヤにまで、
どこかに引っ掛けてしまわないようにとの
冴羽さんの気持ちが、こめられてるみたいね。

本人に言ったら、絶対誤魔化されそうだけど。
・・・それでも、ピンキーなのはやっぱり冴羽さんの
悪あがきなのかしら?(笑)

「ごちそう様v」
「////そ、そういう美樹さんは?」
「う〜ん、うちはこれから。
ファルコンの事だから、もちろん忘れてるって事は
ありえないしv」
「たはは、お熱いことで」

コーヒーの香りが、時間をゆっくりと流れさせてくれる。
こうして子供の頃からの夢だったお店を持たせてくれた事自体、
何事にも変えがたい、彼からの大切な贈り物。

「先月のバレンタインの時は、香さん怒って
ここに来てたけど、よかったわね♪」
「!!!そうだった!あの時あいつったら
せっかくみんなの分も作ってたのに、
チョコ全部食べちゃったのよね(怒)」

あら、悪い事思い出させちゃったかしら?
せっかくのホワイトデー。
だから冴羽さんのサポートも、少しはしてあげないと。
それが香さんの幸せにもつながるし。
ツケは貯めるけど、冴羽さんも一応常連客だし。
サービス、サービス。

「それって、香さんの手作りチョコを
他の人にあげたくなかったんじゃない?」
「え?!////・・・あ〜あたしそろそろ帰る、ね?
コーヒーごちそう様。またね」

カラン―

あら、照れ屋の香さんには居心地悪い話題だったかしら?
それとも、冴羽さんに会いたくなったのかしら?(笑)

それでも、先月は私のとりなしが聞こえない位
怒ってたのに、聞こえるようになったのは
あの小指に輝く石のおかげかしらね(笑)


「美樹、すまなかったな。店空けてて」
クスクスと一人で笑っていると、いつものように
大きな身体に似合わない位静かに、横にファルコンが立っていた。

「ううん、いいの。そんなに忙しくなかったし」
「そうか・・・ところで、少し奥で休んだらどうだ?」
「え?でも、疲れてないし」
「いいから。奥に、紅茶もいれておいた」


少し強引な物言い。どうしても休ませたいみたい、ね?
「うん、じゃあ少し休ませてもらうわね」
「ああ」
普段だったら、営業中に奥で休む事なんてめったにないのに。

「あ・・・」
リビングの扉を開けた私の目に飛び込んできたのは、
テーブルの上の赤い薔薇とロイヤルブルーの箱。

差し込む光に、キラキラとその硬質の花びらが輝く。
飴細工の、薔薇が一輪。

ファルコンが、大きな身体でこの繊細な薔薇を
作ってくれた事が嬉しかった。

薔薇が、涙を通して一際輝いた。


fin

2007年のホワイトデーですv
ちょっと気障な冴羽氏と海坊主氏のような気もしますが、
たまにはいいかなぁと思いまして(*^^*)
少しでも楽しんでいただければ嬉しいです♪
皆様も、素敵なホワイトデーをお過ごし下さい☆


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