サンタの気の早い贈り物…?
「真っ赤なお〜鼻の〜トナカイさ〜んは〜♪」
「はいはい、夜だから静かにしようねぇ」
「なによぉ、いっつももっと夜中に大声で歌いながら
帰ってくるのはどこのどいつよぉ!」
「はいはい、おっしゃるとおりです・・・」
俺は背中におぶさって上機嫌で歌い続けるパートナーに
気づかれないよう、溜め息をついた。
今日は12月23日。
毎年恒例になりつつあるキャッツアイでの
クリスマスパーティーは、24、25日は
パートナーと二人っきりで過ごしたいと公言して憚らない
女主人の意向が尊重され、いつも前後にずれて開催される。
今年も例に漏れず、前日の本日23日に開催された。
そして今年はパーティーが始まる前に、女性参加者は
パーティー前に一斉に店の奥に引っ込んだかと思うと、
みんな美味しそうなサンタの出で立ちで現れた。
よくパーティーグッズ売り場にあるサンタのコスチューム
よりも手が込んでいる。
「その素敵な衣装はどうしたんだい?」
紳士面をしながらミックが聞く。
しかしミック、態度と目は紳士面のくせに鼻の下伸びてんぞ。
「これいいでしょー♪絵梨子さんが忙しい中作ってくれたの」
そんなミックの怪しい表情も気にせず、ニコニコとしながら話してくれた
美樹ちゃんの説明によると、こうだ。
どうやら美樹ちゃんの今年のクリスマスパーティーの強い希望として、
女性陣みんなでサンタの衣装を着てみたかったらしい。
そこで、かすみちゃんと連れ立ってパーティーグッズ売り場に行った時に
たまたま絵梨子さんと出くわし、そんな所の衣装を着るなら私が作ります!
と絵梨子さんがサンタの衣装のデザイン&作成を買って出たという事らしい。
彼女、忙しいはずなのにほんとどこにでも出没するんだな・・・
衣装には何パターンかあり、かすみちゃんと麗香は身体のラインが出る
赤い皮革でできたタイトなワンピースタイプだ。
胸元に白いボンボンがついており、頭には小さな三角帽子。
かずえちゃんと美樹ちゃんはツーピースで、フレアスカートタイプの
落ち着いたタイプ。
袖口にファーがあしらわれ襟元はハイネック。
こちらも胸元にボンボンが揺れている。
そして香はというと、こちらは普段はあまり着ないワンピース。
大きく肩まで開いた襟首はファーでぐるりと縁取ってある。
胸元にはやはりボンボン。
スカート丈は、美樹ちゃん達とかすみちゃん達の間位か。
ま、妥当な長さだな。
恥ずかしそうに、香の視線がこちらをちらりと伺ったのを
感じた。
だが、みんなの前で俺に香を誉めるなんて芸当はできず、
お決まりのパターン。
ほかのサンタ達に飛びかからんばかりに、相好を崩す。
「美っ樹ちゃ〜ん、なんて素敵なサンタさんなんでしょ〜♪
かずえちゃんも清楚さが際立ってて素敵だよ〜
二人共あんなタコ坊主と堕天使なんかやめて、
俺に乗り換えな〜い?」
飛び掛ろうとするとするりとかわされ、床とキスをする。
「あぁらリョウ、あたしは?」
お色気たっぷりにシナをつくって横に立つ麗香に、
すぐに顔を復活させて立ち上がり横から腰を抱き寄せる。
「もちろん、麗香のサンタも素敵だよ。
今すぐ食べてみたいくらいおいしそうだ」
「ひどぉーい冴羽さん、あたしは?」
その横から、かすみが肩を揺さ振る。
「かすみちゃん、君ももちろん素敵なラインだ。
魅力的なサンタに誘惑されたいよ。どうだい、
今からどこかに…」
「リョウぉ〜!!」
「香さん!抑えて。今日はお店壊さないで!」
背後にハンマーを構えた馴染んだ殺気と、美樹ちゃんの
声が重なる。
そして、ゆっくりとハンマーはゴトンと大きな音を立てて床に置かれた。
おそるおそる振り返ると、ふるふると肩を振るわせた握りこぶしの香。
先ほどのはにかんだ表情が、抑えた怒りで真っ赤になっている。
「そ、そうよね、今日は楽しいパーティーだもんね。楽しまなきゃ、
こんなヤツなんて無視、無視!」
「そうだよ、カオリ。君はいつも魅力的だよ。誰が見てもね。
もちろん、かずえも素敵だよ♪」
すかさずフォローに入るミック。
ナイスだ、ミック。
だが、香の腰に手を回すのはやめろ!!
すかさず、かずえがその手を抓り上げる。
「さぁさ、パーティー始めましょ♪クリスマスパーティー♪」
美樹ちゃんが雰囲気を変えるために声を張り上げる。
そして、たくさんのもっこりサンタに囲まれたパーティーは始まった。
…2時間後、顔をたっぷり飲んだシャンパンで真っ赤に
させた香が出来上がった。
あの後も、結局香とまともに話せなかった。
普段見慣れないサンタのコスプレは、普段は隠れている
色気まで着飾ってんじゃねぇかと思えて、直視できなかった。
だぁ〜!!!俺は青いガキかぁ!
そんな状態だったから、どうしても他のメンバーとばかり
話しちまって、香は完全に放っぽり状態。
もちろんミックという害虫もいるし、視界の端では
つねに追ってはいたが。
美樹ちゃんが気を使って話し掛けるのに、少々浮かないながらも
笑顔を返す香の表情は、どんどんトーンダウンしていくのが
目に見えてわかる。
しかも、手元には一向にペースダウンする様子を見せずに
どんどん減っていくグラスの中身のシャンパン。
おいおい飲み過ぎだって。
そんなこんなで、出来上がった酔っ払いサンタ。
結局着替えることも出来ないくらい泥酔で、まっすぐ歩けない状態
の香を俺がおぶって帰ることになった。
最初は着替えられない香をここに泊まらせてもらうことも
考えたんだが、海坊主のヤロウに『俺はそんなヤボじゃねぇ!』と
拒否された。
たく、あいつたまに訳わかんねぇこと言いやがる。
泊めてくれれば俺は、こんな暴れるパートナーを背負って
帰らなくて良かったんだ。
しかも、コートでは隠してるがサンタのカッコのままだしな。
「…リョウのバカ…」
ん?静かになったと思ったらそんな悪口が呟くように背後から
聞こえ、肩越しに覗き込むと香は眠りこんでいた。
静かになった香を背負っていると、初めて会った頃の
香を思い出す。
少年のような中世的な顔立ちで、車の前に飛び出して
きたシュガーボーイの頃の香。
あの時はまさかパートナーに香がなるなんて、
ましてや俺がこいつに惚れるなんて状況になるなんて
思いもしなかった。
あの頃は背負ってても骨っぽい感じがしたもんなぁ。
それが今じゃこんなに背中に当たるもんが
やわらかいったら…
懐かしく昔を思い出し、昔の香と今背負っている香の肢体
をついつい比較しちまった俺。
かーバカだっ!!
それによって、あえて意識しないようにしていた背中の香に
意識がいっちまった。
背中に当たる胸はいつのまにか熟した果実のように
甘やかな芳香を放って、俺を時々誘惑する。
うなじも、最近は香水もつけてないはずなのに甘い
香りがすれ違いざまに俺の鼻腔をくすぐってくる。
しかも、今日はおいしそうなサンタのカッコ。
意識した途端に、俺の中で理性と本能が戦いだした。
寝たことで弛緩した香の身体は、より俺の背中に
密着してくるわけで、それはあと一歩踏み出せない俺には
甘い拷問でしかなく。
「ぅん…」
しかも、耳元でそんな別の想像されるような声出すなぁぁぁ!!
寒いのか、背中に擦り寄ってくる香を落とさないように
慌てて足を抱えなおし、改めて今日はスカートである事に
気付いてしまう。
という事は俺の腕はストッキングという薄いものしか挟んでいない
ない状態で、最近さらに見惚れる曲線のスラリとした足を
抱えているわけで…
俺は頭を抱えることもできず、ただひたすら家路までの
道を急ぎながらこの甘い誘惑の拷問に耐えていた。
俺、アパートまで我慢できんのか…
しかも帰ってからもどうすりゃいいんだ…
ガンバレ、俺。
そうして、2005年のクリスマスイブイブの夜は更けていった。
新宿の街同様、眠らない(眠れない?)男がここに一人。
《あとがき》
お待たせいたしました。さいもんさんのリク第二弾『リョウちゃんいじめ♪』
です。
やっぱりリョウをいじめるには、カオリンが他の男の人との事で
ヤキモキさせるか、カオリンの魅力に翻弄されるリョウかどっちかなぁって
思いまして、こんな感じになりました(^^)
しかも時期が時期だけにやっぱりクリスマスに絡めよう!!って思った途端に
みんなに是非サンタの格好して欲しい!!って願望が(笑)
楽しく書かせていただきました♪
さいもんさん、お口にあえばよいのですが。
いじめ、足りてます?もっといじめます?(笑)
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